2007年6月18日
【本文】 Saqrik
そのプロセスに焦点を当てたSaqrikによるレポートを紹介する。

巨大産業プロジェクトの参入に関しては、該当する地域の住民にその賛否を問わなくてはならない。住民側が「意見を求められる」この権利は、国際協定によって法的に確立され、国の法令及び憲法に組み込まれており、世界中で資源抽出を行う企業の議論においてもたびたび話題となる権利である。
しかし、プロジェクトに関する協議が住民共同体に有益な形で行われる場合、それまで住民の権利を認め、「協議」の推進を主張していた組織や企業が、その態度を一変させることがあまりにも多く見られる。そういった協議プロセスは違憲であり、操作の意図が感じられる非民主的なものだ ― そう非難することで対処しようとするのだ。
2005年6月18日、グアテマラ・サンマルコス県シパカパ市で行われた「コンスルタ(住民による協議)」を取り上げよう。協議のプロセスを理解するのに格好の例だ。
グラミス・ゴールド社(以下ゴールドコープ社)は、シパカパ及びサン・ミゲル・イシュタウアカンの人々と有意義な協議を経ずして重機を持ち込み、マーリン鉱山(1996年の和平協定以後グアテマラで大規模に展開された最初の鉱山プロジェクト)を開く準備を始めたのだった。これに関しては、世界銀行のコンプライアンス諮問オンブズマン(法令遵守に関する諮問機関)による調査結果を含む多くの物的証拠が存在する。
結局ゴールドコープ社が地元住民に協議を持ちかけることはなかった。これに対し、シパカパの住民は自らのコンスルタを組織することでこれに対抗したのだった。これは体系的に組織されたコンスルタであり、地元住民は透明性が保たれた表決方法によって、自分たちが住む土地に広がりつつある鉱山プロジェクトに対する賛成・反対の意思表示を行うことができる。
コンスルタはシパカパ市当局の許可を得て開催され、『独立国家における先住民・種族民に関する国際労働機関(ILO)169号条約』(1996年6月5日にグアテマラ政府が批准)に従うよう組織された。
このコンスルタを嗅ぎつけるや否や、ゴールドコープ社の代理人がコンスルタのプロセスに対し、その違憲性を訴える訴訟をサン・マルコス県の下級裁判所に起こした。次いで同社は、違憲性についての訴えをグアテマラの最高法規機関である憲法裁判所に持ち込んだのだった。
ゴールドコープ社の資料には、同社自ら地元住民との協議を行い、2つの地元共同体は鉱山プロジェクトに賛成したと記録されている。しかし、これら2件の訴訟は、コンスルタの開催以前に起こされている。
仮に、鉱業活動に対する地元共同体の賛成を公言するゴールドコープ社の言葉を信じるのであれば、同社はなぜ、地元共同体が自ら立ち上げたプロセス、つまり自分たちの居住地における鉱山開発の是非を問う場、これを不正とする先制法的行動をとったのだろうか。その理由を理解するのが困難となる。
2007年5月、ゴールドコープ社が先述の訴訟を起こしてから2年近くを経て、グアテマラ憲法裁判所はシパカパ・コンスルタの合法性とその拘束力について判決を下した。「コンスルタのプロセスは合法である。しかし、法的拘束力は持たない。」
後の調査報告書はこう指摘する。「(憲法裁判所の)判決は、政治的、経済的利益、そしてそして商業的利益にさえも左右された可能性がある。」(1)
断固たる「ノー」
ゴールドコープ社にとって、コンスルタの問題はたった1つ、それは「人々が『正しくない』答えを出した」ことであった。
2005年6月18日、シパカパに13ある共同体のうち11が、全会一致で鉱山プロジェクトに反対票を投じた。それ以降、シパカパの住民はプロジェクトの動きに目を光らせており、採掘活動は彼らの領土には及んではいない。
先述の憲法裁判所の判決がどうであれ、コンスルタの責務は明らかだ。
シパカパでコンスルタが組織されて以来、鉱山探査の採掘許可が与えられた約15の市が同様のコンスルタを開催している。どのコンスルタにおいても、鉱山の探査、開発、拡大の全てが断固拒否されている。
シパカパに住む1万4千人 ―その大半がマヤ系シパカパンセの人々― の闘いは現在も続いている。彼らの闘いは、領土を自らの手で管理する権利を守ろうとするその他の共同体にとって、そして鉱山産業自体にとっても、国際的な重要性を帯びている。
先のコンスルタが開催されるほんの数日前、デイヴィッド=J=デロリエがリソース・インベスター誌に次のような記事を寄せている。『グラミス社が行う(マーリン鉱山に関する)広報活動の成否は極めて重要だ。同社は決して負け戦などできない状況にあり、現実的には鉱山産業全体が組織的対処を必要としている。影響を受けるのはグラミス社だけではない。全世界の鉱業にその影響が及ぶこととなろう。』(2)
鉱業界の「必勝」の論理は、多額の資金を投入した広報キャンペーン、政府高官の巨大な人脈、銀行や国際金融機関、そしてメディアへの特権的アクセスによって支えられている。
地元共同体が表明した断固たる「ノー」は、その言葉通りの意味を持つ。鉱山プロジェクトによって直接的影響を受けるだろう人々による、鉱山プロジェクトそのものへの反対である。上からの押し付けの「開発」に対する拒絶なのだ。
さらに重要なことに、世界の鉱業にとって反論の余地もないこの揺ぎない「ノー」は、生きること、地球、そして地域社会の管理に関する力強くかつ合法的、そして民主的な意思表示なのだ。
グアテマラ サン・マルコス県 コンセプシオン・トゥトゥアパ
2007年2月12日に開催された鉱山を巡る住民投票に参加するため、グアテマラ各地から多数の代表者がコンセプシオン・トゥトゥアパ市に詰めかけた。住民投票に立ち会ったりそのプロセスを手伝おうと来た人々もいれば、自らの共同体で同様の協議を組織しようと、ここでの手順を学ぶ人々の姿も見られた。2005年6月に開かれたサン・マルコス県シカパカの住民投票以降、鉱業のみならず水力発電施設や巨大港湾施設、不適切な計画の下進められる道路建設や石油産業に伴う巨大プロジェクトから自らの領土や生活様式、そしてより広義には住民全体の幸福を守ろうと、多くの共同体がそのプロセスを再現してきた。
持続可能な開発に焦点をあてて活動するグアテマラの非政府組織CEIBAが、様々な分野の活動家や地方自治体の職員からなる代表団を組織した。これにはフンダシオン・マヤ及びCEIBAのメンバーに加え、以下の市当局の代表者が参加した ― イシュカン及びサン・フアン・コツァル(キチェ県)、コロテナンゴ、サン・フアン・アティトラン及びコンセプシオン・ウイスタ(ウエウエテナンゴ県)、ソロラ及びソロラ先住民自治体(ソロラ県)。この写真は、2月11日の朝にウエウエテナンゴ県コロテナンゴで参加者が朝食をとっている場面だ。彼らはこの後、コンセプシオン・トゥトゥアパに向かう。
コンセプシオン・トゥトゥアパに向かう途中、代表団は悪名高いマーリン鉱山を自らの目で確かめ、鉱山が地元の景観をどう変えてしまったのかを目の当たりにしたのだった。マーリン・プロジェクトを運営するのは、ゴールドコープ社(本社カナダ・バンクーバー)が完全出資する現地法人、モンタナ・エクスプロラドーラ社である。
オスカル=ベルシェ現グアテマラ大統領の家族、「ベルシェ=ウィドマン一家は、現大統領の家族であることにとどまらず、グアテマラ国内で企業投資を行う家族グループの1つに一躍踊り出ようとしている。(現在行政執行権を独占的に握る政党である)ガナ党は、(この目標を達成するための)重要な手段なのだ。家族として、ベルシェ・ウィドマン一家はグアテマラ・ニッケル会社及びモンタナ・エクスプラドーラ社、そしてペトロラティーナ社の経済的利益を握っている。」(3)

「環境に関する市当局委員会、地元共同体の長、コンセプシオン・トゥトゥアパ内の開発委員会組織のメンバーらは、国際企業が我々市庁内の特定の場所における採掘活動の拡大に関心を示していることは既に承知だ。それに加え、グアテマラ・エネルギー鉱山省は我々に相談なしに既にいくつかの認可を与えており、これは国際労働機関(ILO)169号条約に反するものだ。よって、我々は正式に市当局に対し請願を行い、市の法律に明記されているとおり、マヤ国家としての自己決定権を我々が行使できるよう、その手助けを求めたのだった。その方法は、我々の領土における採掘活動の方向性を決定するために、市民全員が参加する住民投票を行うというものである。」(4)
住民投票前夜。小さな屋台が住民による協議に対する考え方を表すサインを掲げる。「コンセプシオン・トゥトゥアパ=生きること。鉱山=死。協議に参加しよう!鉱山にノーの一票を投じよう。」
Tuijoj集落(人口200人)
2007年2月12日、住民投票当日のTuijojの様子。後ろには中央アメリカの最も高い山脈、クチュマタネスが聳え立つ。
投票プロセスの開始を待つTuijojの住民。
全体プロセスの中でも重要な瞬間が遂に訪れた。「我々の町における金属採掘活動に反対の者は挙手を!」 住民のほとんどがマヤ系マムの人々であるコンセプシオン・トゥトゥアパの伝統に従い、表決は挙げられた手を数えて行われる。
賛成、反対それぞれの挙手人数を数えたのち、このプロセスを認証するため、全ての有権者が登録を行う。
鉱山に関する問題は大きな危険を孕んでおり、そのことは地元住民ドン・アポロニオの発言に見て取れるだろう。「大型機材や人間が採掘活動のために我々のコミュニティに足を踏み入れたならば、彼らは私刑によって殺され、その体には火が放たれるであろう。もし外国人が来れば、彼らもまた私刑によって裁かれ、火あぶりに処されるだろう。彼らが来れば我々は戦争を始めるのだ。我々の子供たちを守るための戦争をね!」
「決して、断じて、何があろうとも、我々が領土を売ることなどない・・・Tuijojは鉱山開発に反対する。」 村は全員一致で全ての採掘活動に反対票を投じた。
ウイスパチェ共同体(人口550)
Tuijojより少し大きな規模を持つウイスパチェは、Tuijojから数キロ離れた丘の上に立つ共同体だ。
協議プロセスを進めるため、コミュニティの成人人口の大半が公会堂に集合した。
ウイスパチェの住民、マリア=アデリーナ=パスは言う。「我々は(中央)政府が我々の主張に耳を貸し、マヤの共同体による決定を尊重してくれることを望んでいるの。人々の団結は強さを生むのよ。」
コンセプシオン・トゥトゥアパの農民統合開発協会のメンバーであるマノス=ゴンザレスはこう語る。「(マーリン鉱山のほとんどがある)サン・ミゲル・イシュタウアカンからは、膨大な数の人々がアメリカやメキシコ、沿岸地域へ流出している。鉱山会社が当初約束した仕事は嘘っぱちだった。それだけでなく、アルコール依存症、売春、暴力行為などの全てが(鉱山の参入以来)増加している。これらは全て外来の思想であり、外からの影響で引き起こされた社会変化なのだ。そして酷い貧困と非識字率は未だ解決されないまま残っているよ。」
Tuijojの住民同様、ウイスパチェの住民もまた、彼らの領土における金属採掘活動を確固として拒否したのだった。
「今日この日、市内にある64の共同体全てにおいて住民投票が行われた。このプロセスを通し、我々全住民が議論、思案を重ねた結果、採掘活動は我々に何の利益ももたらさないとの結論に至った。それどころか、採掘活動により我々は自然遺産を失うことを余儀なくされるし、一度失われた遺産を決して取り戻すことはできない。よって、我々はエネルギー鉱山省が国際企業に与えた鉱業権を認めないとの決定を全員一致で採択する。」(5)
サンチアゴ開発プロジェクト(PRODESSA)のメンバーであるエドガー=ガルシアがこう結んだ。「サン・ミゲル・イシュタウアカン及びシパカパの住民は騙されたのだ。我々は同じことがこの土地で繰り返されることを望まない。我々が望むのは、この環境を救うことであり、失うことではないのだ・・・ 我々は国際社会の支援を求める。グアテマラの人々は立ち上がる。我々はこれまで500年にもわたり抵抗を続けてきたのだ。ここで国際企業に対し提案をしたい。我々の自然資源に関しての決定は我々自身に決めさせて欲しい。」
English version click here
Versión en español aquí
1. ウェザーボーン=J 『Consultas populares pierden terreno ante la CC』 (www.albedrio.org/htm/articulos/jw-002.htmから転載)
2.デロリエ=D 『Guatemalan Gold Mine Opponents Try to Tarnish Glamis in Debate』(リソース・インベスター誌2007年6月20日号) (www.resourceinvestor.com/pebble.asp?relid=10518.から転載)
3. ソリス=フェルナンド 『Caracterización de las elecciones generales 2007』(2007年4月グアテマラ)15頁
4. サン・マルコス県コンセプシオン・トゥトゥアパ市 環境に関する市当局委員会による公式声明(2007年2月13日)
5. 同上











