2007年6月18日
テーマ 鉱山開発
参入から3年、マーリン金鉱山はサン・ミゲル・イシュタウアカンの地元共同体に数多くの社会問題をもたらしてきた。 同社の鉱山プロジェクトは、カナダ資本の鉱山会社ゴールドコープ社の現地法人、モンタナ・エクスプラドーラ・デ・グアテマラ(以下モンタナ社)が運営する。 サン・ミゲル統合開発協会(以下ADISMI)のメンバーによると、「プロジェクト発足以前に専門家が注意を促した被害の全てが現実となった。 森林破壊、極度の粉塵、水源の汚染、干上がった井戸、水利用を巡る争い、そして鉱山から排出される有害廃棄物の蓄積が起こっている。」(1)
例に挙げられた環境や健康被害に加え、事前に警告がなされなかった副次的な悪影響が原因で、今年に入り社会的緊張が危険なまでに高まっている。 マーリン・プロジェクトが運営される丘陵斜面全体に対して行われた爆砕工事により、59戸を超える家屋がひび割れや亀裂の深刻な被害を受けている。この被害は、 アヘルやサン・ホセ・ヌエバ・エスペランサといった鉱山から数メートルのところにある村々に特に集中している。
アヘル村の住民クリサンタ=エミタリア=エルナンデス=ペレスは言う。「家屋のひび割れは鉱山会社が爆薬を仕掛けた際に起こったのよ。 地面が揺れたのを感じ、その後ひび割れは徐々に大きな割れ目となっていったの。」
エルナンデス=ペレスが、1部屋しかない自宅の壁から床に向かって走る亀裂を見せてくれた。「鉱山会社がもたらした被害は酷いものよ。 彼らがここに来るまで問題なんて何一つなかったのに。以前も私たちが住んでいたのは簡素な家だった。 でもこんな様子では決してなかったの。私は、そう、怖いのよ。 だって、頭上からこの家が崩れ落ちてくるのじゃないかと思うのだから。でも私たちにはこの家しかないの。 他に行く当てもないわ。」
2006年の終わりにかけて、多くの住民がモンタナ社に対し家屋の亀裂に関する陳情を行おうと集まった。エルナンデス=ペレスによると、「モンタナ社のエンジニアがやって来て、ひび割れの原因は家の建築が粗末だったせいだと言ったわ。 または近所を通る車による振動のせいだとね。モンタナ社が原因だとは認めなかった。 」
今年の1月10日、28人の地元住民が同社との話し合いを求めた。彼らの共同体が被っている幾多の問題だけではなく、 モンタナ社への土地売却に際し支払われたあまりにも低い経済補償額について協議するためである。しかしその話し合いの後、モンタナ社の統括マネージャーによってフェルナンド=バシリオ=ペレスは銃撃され、共同体のその他の住民も拳銃を持った同社の警備員による脅しを受けた。その後まもなく、不満を抱いた650人近くの住民が鉱山へと続く道にバリケードをはり、鉱山の操業は13日間にわたり停止を余儀なくされた。(3)
道路封鎖への報復として、モンタナ社は7人の共同体リーダーに対する逮捕状の発行を手配、1月10日の話し合い後に住民との対立が起こったとし、武力行使、脅迫、軽度及び重度の怪我を負わせたとの理由でこの住民7人を訴えたのだった。この7人の中には、ペドロ=デ=レオンのように、話し合いにすら参加していなかった人物も含まれていた。(4)
フェルナンド=バシリオ=ペレスの妻が、住居の入り口近くに現れたひび割れを指差す。

2007年2月13日の早朝5時20分、国家警察隊のメンバーがフェルナンド=バシリオ=ペレスの自宅に突然現れ、行き先がわからないよう目隠しをしてフェルナンドを強制的に拘束した。同日、マリオ=バマカも同様に強制的に連行された。 サン・マルコス教区の弁護士が彼らの釈放許可をどうにか得るまで、この2人の共同体リーダーは3日間を刑務所で過ごした。彼らの釈放は、2人の自宅軟禁及び残り5人のリーダーに対する人身保護請求権を認めることが条件とされたのだった。この一件は未だ解決に至っていない。(5)
マリオ=バマカが所有する福音派の教会に生じた壁の亀裂。
グアテマラ当局は国際的企業の出資による巨大プロジェクト参入を選択し、 先住民コミュニティに対する強制退去や不当な扱いを続けている。 加えて、特定の共同体リーダーが弾圧の対象となっており、この地域の緊張は高まる一方である。こういった対立は、1970年代から80年代にかけて起こった悲惨な出来事と多くの類似点を持つ。当時、バハ=ベラパス県ではチショイ・ダムの建設が、イサバル県エル・エストールではエクスミバル社によるニッケル鉱山開発が行われ、 どちらも幾度にも及ぶ大虐殺や、 さらにはプロジェクトが行われる土地に元々住んでいた住民の皆殺しという結果に終わっている。
マリオ=バマカの妻、フアナ=バレンティーナ=バマカは言う。「鉱山は悪よ。この土地から出て行け!」
この地域における緊張をさらに高めているもう1つの問題が、鉱山プロジェクトと地元住民の間に起こっている水を巡る争いである。マーリン鉱山が1時間に25万リットルの水を使用するのに対し、サン・マルコス県の平均的1家族が1日に必要とする水の量は30リットルである。つまり、鉱山はたった1時間で平均的家族が22年かけて使用する水量を必要としているのだ。(6)
クリサンタ=エルナンデス=ペレスは言う。「私たちが使っていた井戸はもう枯れてしまったわ。以前は40人が同じ井戸から水を汲むことができたのよ。でももう干上がってしまったの。水がなくなってから1年になるわ。枯れてしまった井戸は6つもあるのよ。」
鉱山プロジェクト内には、 有害廃棄物が溢れる大規模な「湖」があり、その存在がさらに不安を掻き立てている。「2006年の年末にかけて、イタリアの分析専門家フラビアノ=ビアンチーニにより、シパカパのツァラ川の水質調査が行われた。 その結果、鉱山からの酸性排水によって同河川が確実に汚染されていることが示された。 鉱山の排水路では、通常レベルと比較して80倍の銅、13倍のアルミニウム、2.5倍のマンガンが検出された。 約5,000人の地元住民の健康が直接的な影響を受ける可能性がある。大量に摂取された場合、銅はDNAの変異、肝不全、皮膚や歯、毛髪の疾患を引き起こす可能性を持つ。 アルミニウムは神経系に影響を及ぼし、認知症、記憶喪失、無気力、重篤な震えなどを引き起こしうる。」(7)
モンタナ社とGANA党(スペイン語で『勝利』の意)に属するオスカル=ベルシェ現グアテマラ大統領との直接的なつながりは、十分な裏づけがある事実である。(8) さらに、シパカパ及びサン・ミゲル・イシュタウアカンの現市長は4年前にGANA党以外の政党勢力から政権についた人物であるが、それ以降一貫して、地元共同体が満足する暮らしを優先させるのではなく、 鉱山プロジェクトに賛成の立場をとってきた。そして今、彼らはGANA党からの再選を目指しているのである。サン・ミゲル・イシュタウアカンの現市長の選挙スローガンはこれだ。 「継続した平和を求めるなら、オスワルド市長に一票を。」 高まる社会的緊張、そして投票まで40日しか残されていないという事実を考慮すれば、このスローガンを脅しと解釈しないほうが難しい。
市内にあるいくつかの共同体において、モンタナ社はグアテマラの発展のためにと提供してきた多額の寄付金額を誇示している。2004年のプロジェクト開始以来、同社はサン・ミゲル・イシュタウアカンに750万ケツァル(米ドルにして100万ドル)の寄付金を誇らしげに申し入れ、同市はこれを受け取っている。
しかし、サン・ミゲル・イシュタウアカンにあるほとんどの共同体に経済的な恩恵はもたらされていない。住民の大半がマヤ系先住民族マムに属する人々であるが、 彼らは貧困レベルをはるかに下回る生活を未だ送っている。
鉱山から2キロほどのところにあるマキビル村では、エレーナがろうそくを明かりに、トウモロコシの芯の部分を薪代わりに夕食の支度をする。その一方で、ゴールドコープ社は2006年に4億800万ドルもの記録的高収益をたたき出している。(9)
ADISMIのメンバー、ハビエル=デ=レオンはこう結ぶ。「これが我々住民が望む開発ですか。私たちに何を交渉しろというのでしょう。交渉して折り合いをつけることができるものなど何もないのです。 『生きること』を誰かと交渉するなんて考えられますか。そんなことは到底無理な話なのです。 健康も同様です。話し合いの対象ではありませんよね。鉱山の参入によって、人の命が危険にさらされています。 鉱山は我々の共同体が必要とする開発のモデルではありません。 サン・ミゲルの共同体内で、開発や発展を生み出す違った方法があるはずなのです。」
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Versión en español aquí
1. ADISMIとのインタビュー。2007年7月19日。
2. 同上
3. 同上
4. 同上
5. 同上
6. Colectivo Madre Selva. Minería de Metales en Guatemala; 2005. www.madreselva.com.gt
7. “CEG: Agua del río Tzalá, en Sipacapa, está contaminada,” El Periódico, el 6 de enero, 2007
8. Solís, Fernando. “Caracterización de las elecciones generales 2007”. El Observador Electoral. Segunda época, No.1, p. 15. Guatemala, Abril 2007